医療法人の理事長は小規模企業共済に入れない|退職金の備え方
個人開業のころに、小規模企業共済で退職金を積み立てていた先生もいるでしょう。医療法人の理事長になった今も入れるのか、気になるところです。
この記事の要点
- 医療法人の理事長(役員)としては、小規模企業共済に入れません。
- 職員の退職金の共済(中退共)にも、理事長は入れません。
- 主な選択肢は、法人からの退職金と、ご自身のiDeCoなどです。
目次(6項目)
医療法人の理事長は、小規模企業共済に入れる?
入れません。理事長に限らず、医療法人の役員としては加入の対象外です。
小規模企業共済は、個人事業主や会社の役員が、ご自身の退職金を積み立てる国の共済制度です。中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営しています。
入れる役員は、法律で会社や企業組合などの役員に限られます。中小機構は、医療法人を「直接営利を目的としない法人」としています。
そのため、医療法人の理事長・理事・監事は入れません。法人の規模や、利益の多さは関係ありません。
詳しく:入れる場合・入れない場合の細かい例
- 個人の医院の事業主として入った後、医院を続けたまま理事長にも就いた場合は、加入資格があるとされます。
- 会社の役員を兼ねていても、医療法人の理事長が主な仕事なら、入れないことがあります。
- 当てはまるかどうかは、中小機構の共済相談室で確かめられます。
入れないのに入っていたときは
加入資格がないと分かると、契約は加入時にさかのぼって取り消され、掛金が返されます。
掛金を所得から差し引いて申告していたら、申告のやり直し(修正申告)が必要です。
個人開業のときの共済は、法人にしたらどうなる?
個人の医院を廃業して医療法人の役員になると、続けられません。廃業として共済金を請求します。
払ってきた期間を、法人の役員としての契約に引き継ぐことはできないと、中小機構は説明しています。加入した時期にかかわらず、廃業の理由で共済金を請求できます。
共済金を一括で受け取ると、退職所得の扱いになります(中小機構の説明)。退職所得は、勤めた年数に応じて差し引ける額があり、税が軽く計算される所得です。
手続きの流れは、歯科医院の院長の退職金の記事でも説明しています。
職員向けの中退共に、理事長は入れる?
理事長は入れません。理事長以外の理事で、職員の役職もあり、常にその仕事をして賃金を受ける人は、入れることがあります。
中退共(中小企業退職金共済)は、法人が掛金を払い、職員の退職金を積み立てる国の制度です。勤労者退職金共済機構が運営しています。
法人の役員は、原則として入れません。入れるのは、職員の役職もあり、常にその仕事をして賃金を受ける理事に限られます。
中退共は、入れない役員として「代表理事」や「監事」を挙げています。医療法で、理事長は法人を代表すると定められています。そのため、理事長は入れる理事に当たりません。
職員としても働く理事の給与の扱いは、理事の給与の記事で説明しています。
理事長の退職金の備えは、何で考える?
主な選択肢は、法人から払う役員退職金と、ご自身で積み立てるiDeCoです。法人によっては、企業型の確定拠出年金もあります。
| 制度 | 理事長として | 税の扱い |
|---|---|---|
| 小規模企業共済 | 入れない | ― |
| 中退共 | 入れない | ― |
| 役員退職金(法人) | 受け取れる | 条件を満たせば法人の経費(損金)。受け取る側は退職所得 |
| iDeCo(ご自身) | 入れる | 掛金は全額を所得から差し引く。一時金は退職所得 |
役員退職金は、法人が払う退職金です
実際に退職し、社員総会(法人の運営を決める会議)などで額を決め、高すぎない額なら損金に入ります。
高すぎる(税法の言葉で「不相当に高額」)と判断された部分は、損金に入りません。受け取る側は退職所得として、税が軽く計算されます。
くわしくは理事長の退職金の基本の記事をご覧ください。
規程の書き方は、退職金規程の作り方の記事で説明しています。
iDeCoは、ご自身で積み立てる年金です
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、自分で掛金を出して運用し、原則60歳から受け取る年金制度です。
報酬を受けている理事長は、法人で厚生年金に入るので、会社員と同じ区分で入れます。掛金は全額、所得から差し引けます。
掛金の上限は、2026年12月分から上がります。法人に企業年金(企業型DCなど)がなければ、月2.3万円から月6.2万円になります。
原則として60歳まで引き出せません。受け取るときは、一時金か年金(分割)かを選べます。運用の結果で、受け取る額が掛けた額を下回ることもあります。
詳しく:企業型の確定拠出年金(企業型DC)
- 法人が規約をつくって国の承認を受け、掛金を出す年金制度です。
- 厚生年金に入る役員も、加入者にできます。法人が出す掛金は全額が損金です。
- 法人が企業型DCなどを始めると、iDeCoの上限はその分だけ下がります。
退職金とiDeCoを両方受け取るときの注意は?
両方を一時金で受け取ると、時期によっては差し引ける額が減ることがあります。受け取る順番と間隔を、前もって確かめておきます。
退職金もiDeCoの一時金も、退職所得です。差し引ける額(退職所得控除)は、勤めた年数や加入した年数で決まります。
2つの年数が重なり、受け取る時期が近いと、重なった年数の分を差し引けなくなる仕組みがあります。
詳しく:調整される期間
- iDeCoの一時金を先に受け取ると、その後9年以内に受け取る退職金が対象です。
- この9年は、2026年1月以後に受け取った一時金から当てはまります。年数は、受け取った年を単位に数えます。
- 退職金を先に受け取ると、その後19年以内に受け取るiDeCoの一時金が対象です。
例(架空の数字)
60歳でiDeCoの一時金を受け取り、65歳で理事長を退いて退職金を受け取るとします。
間は5年で、9年以内です。理事長の期間とiDeCoの期間が重なる分、退職金のほうで差し引ける額が減ることがあります。
計算は複雑なので、受け取る前に顧問税理士にご確認ください。
まとめ
- 医療法人の理事長(役員)としては、小規模企業共済に入れません。個人の医院を廃業して法人にしたら、共済金を請求します。
- 職員の退職金の共済(中退共)にも、理事長は入れません。
- 主な選択肢は、法人からの退職金と、ご自身のiDeCoなどです。両方を一時金で受け取るときは、時期に注意します。
個人のときの共済の手続きと、退職金・iDeCoを受け取る時期を、顧問税理士と確かめておきましょう。
確認すること
- 個人のときの小規模企業共済の共済金を、請求し終えているか
- 理事長になってから、小規模企業共済に新しく入っていないか
- 法人に役員の退職金規程があり、社員総会で承認しているか
- 法人に企業年金(企業型DCなど)があるか(iDeCoの上限が変わります)
- 退職金とiDeCoの一時金を、それぞれ何歳で受け取る予定か
出典・参考資料(クリックで開く)
この記事は2026年11月時点の情報にもとづいています。
- 中小機構 小規模企業共済 加入資格
- 中小機構 【よくあるご質問】小規模企業共済の資格要件について
- 中小機構 FAQ ID:749 医療法人の役員に加入資格がないのはなぜですか
- 中小機構 FAQ ID:2043 医療法人成りして共済契約を継続できますか
- 中小機構 共済金等請求・解約(税法上の取扱い)
- 中退共 Q&A 使用人兼務役員は加入できますか?
- 中退共 Q&A どのような従業員が加入の対象となりますか?
- 厚生労働省 iDeCoの概要
- 厚生労働省 2026年12月からiDeCoがパワーアップ!制度改正の3つのポイント
- 厚生労働省 確定拠出年金制度の概要
- 厚生労働省 確定拠出年金Q&A
- iDeCo公式サイト iDeCoの特徴
- 厚生労働省 医療法人の機関について(医療法第46条の6の2)
- 国税庁 No.1135 小規模企業共済等掛金控除
- 国税庁 No.2732 退職手当等に対する源泉徴収
- 国税庁 令和8年版 源泉徴収のあらまし 税制改正等の内容
- 国税庁 No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)
- 国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
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