公開: 2026-11-08 最終更新: 2026-11-08

医療法人の理事長は小規模企業共済に入れない|退職金の備え方

個人開業のころに、小規模企業共済で退職金を積み立てていた先生もいるでしょう。医療法人の理事長になった今も入れるのか、気になるところです。

この記事の要点

  • 医療法人の理事長(役員)としては、小規模企業共済に入れません。
  • 職員の退職金の共済(中退共)にも、理事長は入れません。
  • 主な選択肢は、法人からの退職金と、ご自身のiDeCoなどです。
目次(6項目)
  1. 医療法人の理事長は、小規模企業共済に入れる?
  2. 個人開業のときの共済は、法人にしたらどうなる?
  3. 職員向けの中退共に、理事長は入れる?
  4. 理事長の退職金の備えは、何で考える?
  5. 退職金とiDeCoを両方受け取るときの注意は?
  6. まとめ

医療法人の理事長は、小規模企業共済に入れる?

入れません。理事長に限らず、医療法人の役員としては加入の対象外です。

小規模企業共済は、個人事業主や会社の役員が、ご自身の退職金を積み立てる国の共済制度です。中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営しています。

入れる役員は、法律で会社や企業組合などの役員に限られます。中小機構は、医療法人を「直接営利を目的としない法人」としています。

そのため、医療法人の理事長・理事・監事は入れません。法人の規模や、利益の多さは関係ありません。

詳しく:入れる場合・入れない場合の細かい例
  • 個人の医院の事業主として入った後、医院を続けたまま理事長にも就いた場合は、加入資格があるとされます。
  • 会社の役員を兼ねていても、医療法人の理事長が主な仕事なら、入れないことがあります。
  • 当てはまるかどうかは、中小機構の共済相談室で確かめられます。

入れないのに入っていたときは

加入資格がないと分かると、契約は加入時にさかのぼって取り消され、掛金が返されます。

掛金を所得から差し引いて申告していたら、申告のやり直し(修正申告)が必要です。

個人開業のときの共済は、法人にしたらどうなる?

個人の医院を廃業して医療法人の役員になると、続けられません。廃業として共済金を請求します。

払ってきた期間を、法人の役員としての契約に引き継ぐことはできないと、中小機構は説明しています。加入した時期にかかわらず、廃業の理由で共済金を請求できます。

共済金を一括で受け取ると、退職所得の扱いになります(中小機構の説明)。退職所得は、勤めた年数に応じて差し引ける額があり、税が軽く計算される所得です。

手続きの流れは、歯科医院の院長の退職金の記事でも説明しています。

職員向けの中退共に、理事長は入れる?

理事長は入れません。理事長以外の理事で、職員の役職もあり、常にその仕事をして賃金を受ける人は、入れることがあります。

中退共(中小企業退職金共済)は、法人が掛金を払い、職員の退職金を積み立てる国の制度です。勤労者退職金共済機構が運営しています。

法人の役員は、原則として入れません。入れるのは、職員の役職もあり、常にその仕事をして賃金を受ける理事に限られます。

中退共は、入れない役員として「代表理事」や「監事」を挙げています。医療法で、理事長は法人を代表すると定められています。そのため、理事長は入れる理事に当たりません。

職員としても働く理事の給与の扱いは、理事の給与の記事で説明しています。

理事長の退職金の備えは、何で考える?

主な選択肢は、法人から払う役員退職金と、ご自身で積み立てるiDeCoです。法人によっては、企業型の確定拠出年金もあります。

制度理事長として税の扱い
小規模企業共済入れない―
中退共入れない―
役員退職金(法人)受け取れる条件を満たせば法人の経費(損金)。受け取る側は退職所得
iDeCo(ご自身)入れる掛金は全額を所得から差し引く。一時金は退職所得

役員退職金は、法人が払う退職金です

実際に退職し、社員総会(法人の運営を決める会議)などで額を決め、高すぎない額なら損金に入ります。

高すぎる(税法の言葉で「不相当に高額」)と判断された部分は、損金に入りません。受け取る側は退職所得として、税が軽く計算されます。

くわしくは理事長の退職金の基本の記事をご覧ください。

規程の書き方は、退職金規程の作り方の記事で説明しています。

iDeCoは、ご自身で積み立てる年金です

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、自分で掛金を出して運用し、原則60歳から受け取る年金制度です。

報酬を受けている理事長は、法人で厚生年金に入るので、会社員と同じ区分で入れます。掛金は全額、所得から差し引けます。

掛金の上限は、2026年12月分から上がります。法人に企業年金(企業型DCなど)がなければ、月2.3万円から月6.2万円になります。

原則として60歳まで引き出せません。受け取るときは、一時金か年金(分割)かを選べます。運用の結果で、受け取る額が掛けた額を下回ることもあります。

詳しく:企業型の確定拠出年金(企業型DC)
  • 法人が規約をつくって国の承認を受け、掛金を出す年金制度です。
  • 厚生年金に入る役員も、加入者にできます。法人が出す掛金は全額が損金です。
  • 法人が企業型DCなどを始めると、iDeCoの上限はその分だけ下がります。

退職金とiDeCoを両方受け取るときの注意は?

両方を一時金で受け取ると、時期によっては差し引ける額が減ることがあります。受け取る順番と間隔を、前もって確かめておきます。

退職金もiDeCoの一時金も、退職所得です。差し引ける額(退職所得控除)は、勤めた年数や加入した年数で決まります。

2つの年数が重なり、受け取る時期が近いと、重なった年数の分を差し引けなくなる仕組みがあります。

詳しく:調整される期間
  • iDeCoの一時金を先に受け取ると、その後9年以内に受け取る退職金が対象です。
  • この9年は、2026年1月以後に受け取った一時金から当てはまります。年数は、受け取った年を単位に数えます。
  • 退職金を先に受け取ると、その後19年以内に受け取るiDeCoの一時金が対象です。

例(架空の数字)

60歳でiDeCoの一時金を受け取り、65歳で理事長を退いて退職金を受け取るとします。

間は5年で、9年以内です。理事長の期間とiDeCoの期間が重なる分、退職金のほうで差し引ける額が減ることがあります。

iDeCoの一時金60歳退職金65歳9年後この間の退職金は調整の対象2026年1月以後に受け取った一時金の場合
図:iDeCoの一時金の後、9年以内に退職金を受け取ると調整の対象(架空の例)

計算は複雑なので、受け取る前に顧問税理士にご確認ください。

まとめ

個人のときの共済の手続きと、退職金・iDeCoを受け取る時期を、顧問税理士と確かめておきましょう。

確認すること

  • 個人のときの小規模企業共済の共済金を、請求し終えているか
  • 理事長になってから、小規模企業共済に新しく入っていないか
  • 法人に役員の退職金規程があり、社員総会で承認しているか
  • 法人に企業年金(企業型DCなど)があるか(iDeCoの上限が変わります)
  • 退職金とiDeCoの一時金を、それぞれ何歳で受け取る予定か
出典・参考資料(クリックで開く)

この記事は2026年11月時点の情報にもとづいています。

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