医療法人の役員退職金規程は計算式を決め社員総会で承認|ひな形
ご自身の退職金のために、顧問税理士に「役員の退職金規程を作っておきましょう」と言われた。でも、何を書けばよいのか。規程さえあれば安心なのかも、気になるところです。
目次(7項目)
退職金規程とは、何を決めておくもの?
理事長などの役員の退職金について、計算式や支給の決まりを前もって決めておく、法人の決まりです。
決めておくと、退職のときに額の根拠を説明しやすくなります。家族が役員の法人でも、同じ式で計算したと示せます。
厚生労働省の定款例には、役員の報酬などを「社員総会の決議によって別に定めるところにより支給する」と書く例があります。退職金規程は、この「別に定めるところ」に当たると考えられます。
定款とは、医療法人の運営のルールを定めた、法人の基本の決まりです。社員総会とは、法人を構成する社員(従業員ではありません)が重要なことを決める会議です。
職員の退職金とは別の決まりです
職員に退職金を出す決まりを作るなら、就業規則(職員の働き方のルール)に書きます(労働基準法第89条)。この記事は、理事長など役員の退職金の規程の話です。
規程があれば、退職金は経費(損金)になる?
規程があるだけでは認められず、額が高すぎないかで判断されます。
損金とは、法人税の計算で、費用として差し引けるものです。税法が見るのは、実際に退職したことと、額が高すぎない(税法の言葉で「不相当に高額」でない)ことです。
損金になる条件は、理事長の退職金の記事で解説しています。
規程に書いた倍率で計算しても、高すぎる部分は損金に入りません。国税庁が通達(法令の読み方を示した文書)を改正したときの説明にあります。
倍率は、同業で規模が近い法人と比べて判断されます。考え方は、退職金の相場の記事で解説しています。
規程には、何を書く?
だれが対象か、どう計算するか、どう決めて支払うかを書きます。
一部の認定を受ける医療法人向けの支給の基準(区分・計算方法・支払いの方法)をもとにすると、次の項目になります。
- 対象になる役員(理事長・理事・監事、常勤か非常勤か)
- 額の計算方法(例: 月額×年数×役職ごとの倍率)
- 支払いの方法
上の3つに加えて、筆者は次の項目も入れておくことをおすすめします。あとで迷いやすい点だからです。
- 額を決める会議(社員総会など)
- 支払いの時期
- 1年に満たない在任期間の数え方
- 在任中に亡くなったときの支給先(遺族)
- 経営の状況などで減らせること
- 規程の変え方
倍率は、役職ごとに分けて決めます
理事長・理事・監事で、仕事の重さに応じて倍率を分けます。
倍率の数字は、規程に書いても認められる保証にはなりません。何倍にするかは、顧問税理士と同業の例を確かめて決めてください。
年数は、法人の業務に従事した期間です
その役員が、法人の業務に従事した期間を使います(相場の記事と同じ考え方です)。
役員になる前の期間や、法人化する前の個人開業の期間をどう扱うかは、顧問税理士にご確認ください。
個人開業の期間の考え方は、歯科医院の院長の退職金の記事で解説しています。
規程は、どんな手順で作る?
定款を確かめ、案を作って社員総会で承認し、記録に残します。
定款例と厚生労働省の通知をもとにすると、次の順番になります。
- 定款で、役員の報酬などの決め方を確かめる
- 顧問税理士と、倍率と年数の数え方を相談する
- 理事会(理事が集まって業務を決める会議)で、規程の案をまとめる
- 社員総会を招集し、規程を承認する
- 承認したことを記録(議事録)に残し、規程と一緒に保管する
2と3は、筆者が補った手順です。定款で決め方が違う場合があるので、1で確かめてください。
社員総会の招集や記録の書き方は、議事録の記事で解説しています。
退職金規程の例
次は、上の項目を入れた架空の例で、対象を常勤の役員に限っています。第3条の計算方法と第7条の支払いの方法が基準の項目にあたり、ほかは筆者の補足です。規程の形は、定款や法人の事情によって異なる場合があります。
役員退職金規程の例(架空)
退職するときは、規程をどう使う?
規程で計算した額を、退職のときに社員総会などで決めて支払います。
損金に入るのは、原則として、会議の決議で額が具体的に決まった日の事業年度(法人の会計の1年間)です。規程を作った年度に、将来の退職金を経費にできるわけではありません。
計算例(架空の数字)
規程の倍率を、理事長2.0と置いた例です。退職直前の報酬月額が100万円、理事長として20年在任しました。
100万円×20年×2.0で、規程の限度額は4,000万円です。退職のときの社員総会で4,000万円と決め、その事業年度に支払います。
相場の記事と同じ数字です。倍率2.0は計算を見せるための仮の数字で、相場や上限ではありません。
退職の直前に、倍率を上げてもよい?
規程は社員総会で変えられますが、高すぎる部分は損金に入りません。
変えるときは、理由を記録に残し、顧問税理士にご確認ください。
医療法人ならではの注意点は?
定款の書き方と、一部の法人にある別の決まりに注意が必要です。
退職金をどの手続きで決めるかは、定款の書き方によって異なる場合があります。規程を作る前に、まず定款を確かめてください。
詳しく:一部の認定を受ける医療法人の決まり
- 一部の認定では、退職金も含めた報酬の支給の基準を定めていることが、認定の要件です。
- 税法とは別の、医療法人の運営の決まりです。該当するかは、都道府県や顧問の専門家にご確認ください。
まとめ
- 退職金規程には計算式と支給の決まりを書き、社員総会で承認しておきます。
- 規程があるだけで、経費(損金)に認められるわけではありません。
- 退職のときは、規程で計算した額を社員総会などで決めます。
まずは定款で役員の報酬などの決め方を確かめ、倍率の考え方を顧問税理士に相談してみてください。
確認すること
- 定款に、役員の報酬などの決め方がどう書かれているか
- 今ある退職金規程は、社員総会で承認した記録があるか
- 規程の倍率を、顧問税理士がどう考えているか
- 職員の退職金の決まりと、役員の規程を分けているか
出典・参考資料(クリックで開く)
この記事は2026年11月時点の情報にもとづいています。
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