理事長の退職金は条件を満たせば経費に|医療法人の損金と税金
医療法人の理事長として、自分にも退職金は出せるのか。出せるなら、何に気をつければよいのか。法人化から間もない方にも、今から関係する話です。
この記事の要点
- 条件を満たせば、法人の経費(損金)にできます。
- 条件は、実際の退職と、高すぎない額の2つです。
- 受け取る側の税金も、軽くなるしくみがあります。
医療法人の理事長も、退職金を受け取れる?
はい。役員として、法人から退職金(役員退職金)を受け取れます。
医療法人では、理事長は法人の役員です。そのため、退職するときに法人から退職金を支払えます。
ここでいう損金とは、法人税の計算で、費用として差し引けるものです。損金になるかどうかで、法人の税負担が変わります。
毎月の報酬の決め方は、役員報酬の記事で解説しています。
退職金が損金になる条件は?
実際に退職していることと、額が不相当に高額でないことの2つです。
実際に退職していることが前提です
退職金は、退職によって支払うお金です。理事長のまま在職して受け取ると、退職金として扱われず、損金に入らない給与とされる可能性があります。
理事長を退いて、理事などとして法人に残る場合もあります。このときは、地位や仕事の内容が大きく変わり、実質的に退職したのと同じといえるかで判断します。
詳しく:実質的に退職したといえる例
国税庁は、その例として次の場合を挙げています。
- 常勤の役員が、非常勤の役員になった(法人を代表する立場の人などは除く。理事長のまま非常勤になっても当たりません)
- 役員の給与が、おおむね50%以上減った(経営の中心に残る人は除く)
形だけ整えても認められません
- 上の例は目安で、最後は実態で判断されます。
- 給与を半分にしても、経営の中心に残っていれば、退職金として扱われないことがあります。
- 役職の変更で退職金を出すとき、実際に払わず、未払いとして帳簿に載せただけの額は、原則として退職金として扱われません。
額が「不相当に高額」でないこと
高すぎると判断された部分は、損金に入りません。
国税庁は、相当な額かどうかを、次の点から見るとしています。税法では、高すぎる額を「不相当に高額」と呼びます。
- その役員が、法人の仕事に従事した期間
- 退職の事情
- 同じ業種で、規模が近い法人の役員退職金の支給状況
額の目安は、「最終の報酬月額×勤めた年数×倍率」で出す方法が広く使われています。
具体的な出し方は、医療法人の退職金の相場の記事で解説しています。
退職金は、いつの年度の損金になる?
原則として、会議の決議で額が具体的に決まった日の事業年度です。事業年度とは、法人の会計の1年間のことです。
国税庁の説明は会社を前提にした書き方です。医療法人では、社員総会の決議などがこれに当たると考えられます。
実際に支払った事業年度に、経費として処理した場合は、その年度の損金にすることも認められます。
ただし、決まる前の年度に、内定した額を未払いとして帳簿に載せても、その年度の損金には入りません。
医療法人では、だれが退職金を決める?
まずは、ご自身の法人の定款を確認してください。
定款とは、医療法人の目的や運営のルールを定めた、法人の基本の決まりです。
社員総会とは、医療法人の社員(従業員ではなく、法人を構成するメンバー)が重要な事項を決める会議です。
厚生労働省の通知では、社団医療法人の理事の報酬等の額は、定款に定めていなければ社員総会の決議で定めます。
退職金をどの手続きで決めるかは、定款の書き方で異なる場合があります。決め方に迷ったら、顧問税理士にご確認ください。
受け取るときの税金は、どう計算する?
退職金は「退職所得」として、ほかの所得と分けて計算します。
退職所得とは、退職によって一時に受け取るお金にかかる所得の区分です。勤続年数に応じた額を差し引き、残りの2分の1に税金がかかるのが原則です。
| 勤続年数 | 差し引ける額(退職所得控除額) |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円×勤続年数(最低80万円) |
| 20年超 | 800万円+70万円×(勤続年数−20年) |
計算例(架空の数字)
医療法人の理事長として20年勤め、退職金を4,000万円受け取ったとします。
差し引ける額は、40万円×20年で800万円です。残りの3,200万円を2分の1にした1,600万円に、税金がかかります。
数字は説明のための例です。実際の税額は、ほかの事情でも変わります。
役員として5年以下だと、2分の1になりません
役員としての勤続年数が5年以下の人が、その役員の期間について受け取る退職金は、2分の1の計算がありません。
法人化して間もない時期に退職金を受け取ると、この扱いになる可能性があります。
確定申告は必要?
申告書を出していれば、原則として不要です。
「退職所得の受給に関する申告書」を支払う側に出していれば、支払いの時に税金が差し引かれます。この場合、原則として確定申告は不要です。
まとめ
- 理事長の退職金は、条件を満たせば法人の損金にできます。
- 条件は、実際の退職と、不相当に高額でない額です。額は社員総会などで決めます。
- 受け取る側は、退職所得として軽い計算になるのが原則です。
退職や役職の変更を考え始めたら、早めに顧問税理士にご確認ください。
確認すること
- 自分の法人の定款に、役員の報酬や退職金の決め方がどう書かれているか
- 理事長として何年勤めているか(役員として5年以下かどうか)
- 退任後も理事として残る予定なら、仕事の内容や給与がどう変わるか
- 退職金の額を、社員総会などでいつ決めるか
次に読む記事: 退職金の目安となる額の出し方は、医療法人の退職金の相場の記事で解説しています。
出典・参考資料(クリックで開く)
この記事は2026年11月時点の情報にもとづいています。