役員報酬 最終更新: 2026-11-06

医療法人の役員報酬は期の途中で上げられない?歯科院長の相場と注意点

自分の役員報酬は、いくらが妥当で、いつなら変えてよいのか。税理士に任せていると、ここがあいまいになりがちです。

結論から言うと、役員報酬は「毎月同額」が基本です。期の途中で上げると、増やした分が経費として認められないことがあります。

この記事の要点

  • 歯科の医療法人の院長給与は、令和6年度の調査で平均約1,458万円、中央値約1,200万円でした。
  • 役員報酬は毎月同額が基本です。期の途中で上げると、増やした分が損金に入らなくなることがあります。
  • 損金に入る形でも、不相当に高額な部分は認められません。

歯科の院長は、みんないくらもらっている?

厚生労働省の「第25回医療経済実態調査」(令和7年11月26日公表)に、歯科診療所(医療法人)の院長の給与が載っています。

年度院長の平均給与
令和5年度約1,478万円
令和6年度約1,458万円

令和6年度は、前年度から1.3%の減少でした。中央値は約1,200万円です。中央値とは、金額の順に並べたときの真ん中の値です。

平均が中央値より高いのは、金額の高い医療機関が平均を引き上げている可能性があります。

目安として使うときの注意

  • 回答した医療機関の集計で、あなたの法人の適正額ではありません。
  • 診療報酬の基礎資料を整える調査で、役員報酬の水準を決める調査ではありません。
  • 院長の「給与」の集計なので、理事長の役員報酬とは一致しない場合があります。

そもそも役員報酬とは?

役員報酬とは、理事長など役員に、職務の対価として支払うお金です。

個人の診療所では、開設者本人の報酬は費用になりません。医療法人では、理事長への報酬を法人の費用として支払います。

ここで出てくる損金とは、法人税の計算で、費用として差し引けるものです。役員報酬は、決まった形で払わないと損金に入りません。

役員報酬は、期の途中で上げてもいい?

期の途中で上げても、増やした分は原則として損金に入りません。ここでいう「期」は、法人の1年間(事業年度)のことです。

損金に入る役員報酬の代表は、次の2つです。要件が限られる別の制度もありますが、ここでは扱いません。

  1. 定期同額給与: 毎月など定期に、同額で支給する給与
  2. 事前確定届出給与: 決まった時期に確定した額を支給すると、事前に定めた給与

この2つに当たらない給与は、損金に入りません。

毎月同額なら、損金に入ります

定期同額給与は、支給の間隔が1か月以下で、その期の支給額がずっと同額の給与です。毎月同じ額の役員報酬が、これに当たります。

期の途中で金額を変えると、原則として同額ではなくなります。ただし、次の改定は認められています。

損金に入らない額はいくら?

計算例(架空の数字)

3月決算(4月から翌3月までが1期)の法人で、理事長の報酬が月60万円だったとします。9月に月額70万円へ増やし、9月分から翌3月分までの7か月間、70万円を支給しました。

この増額が、上の3つの改定に当たらない場合、増額分の月10万円の7か月分、合計70万円は損金に入らないと考えられます。損金に入らない分は、法人税の計算で費用として差し引けないため、税負担が増えます。

あなたの報酬に置き換えるなら、増額した差額に、増額後の月数をかけた金額が目安です。数字は説明のための例です。実際の取り扱いは事情で変わるため、顧問税理士にご確認ください。

月60万円月70万円456789101112123横軸は月(4月始まり・3月決算)9月に増やした10万円ぶん(損金に入らない例)
図:月60万円を、9月から月70万円に増やした例(架空の数字)

後から増やして、まとめて払うのもNG

すでに終わった期間の職務に対して、後から報酬を増やして支給しても、損金に入りません。

例えば、期首にさかのぼって増額し、その差額を後から一括で支給する形は、定期同額給与に当たりません。

賞与を出したいときは?

決まった時期に決まった額を出す賞与は、事前確定届出給与として扱います。所轄の税務署長への届出が、要件になる場合があります。

届け出た金額と実際の支給額が異なると、原則として損金に入らなくなります。

「不相当に高額」と言われないためには?

損金に入る形で払っていても、不相当に高額な部分は損金に入りません。これは退職金も同じです。退職金は役員退職金の記事一覧で、順に解説します。

医療法人の運営の面でも、報酬が不当に高額でないことが求められる場面があります。判断の材料は、一般的な医療法人や民間事業者の役員報酬、従業員の給与、法人の経理状況などです。

「平均より高ければ問題」と単純には決まりません。

厚生労働省の「移行計画認定制度」のQ&Aに、次の説明があります。一般的な水準を超える報酬でも、勤務実態があれば認められる場合があります。あくまで個別の判断で、認められると保証するものではありません。

金額の決め方は、どこに書いてある?

役員報酬の決め方は、法人の定款によって異なります。まずは、ご自身の法人の定款を確認してください。都道府県によって運用が異なる場合もあります。

まとめ

すでに期の途中で上げてしまっている場合は、早めに顧問税理士にご確認ください。

確認すること

  • 今期の役員報酬が、期の途中で変わっていないか(毎月の給与の記録で確認)
  • 来期に報酬を変えるなら、事業年度の開始から3か月を経過する日までの改定に収まるか
  • 賞与を出すなら、事前確定届出給与の届出が必要か
  • 自分の法人の定款に、役員報酬の決め方がどう書かれているか

本記事は一般的な情報の提供を目的としています。個別の判断は、顧問税理士にご確認ください。

次に読む記事: 役員報酬の次は、役員退職金の基本です。準備中の記事は、役員退職金の記事一覧で順に公開します。ほかの報酬の記事は役員報酬の記事一覧にあります。

出典・参考資料(クリックで開く)

この記事は2026年11月時点の情報にもとづいています。