公開: 2026-11-08 最終更新: 2026-11-08

歯科医院の院長の退職金、年数は法人化から|開業期間の扱い

個人で歯科医院を開業し、何年かしてから医療法人にした。そんな院長ご自身の退職金は、勤めた年数を開業の年から数えてよいのでしょうか。

この記事の要点

  • 年数は開業ではなく、法人の役員になった時からと考えられます。
  • 役員として5年以下だと、受け取る側の税金が重くなります。
  • 退職には、理事長と院長を継ぐ人が原則として必要です。
目次(5項目)
  1. 個人開業の期間も、退職金の年数に入る?
  2. 法人化して間もないと、税金は変わる?
  3. 個人開業のときの小規模企業共済は、どうなる?
  4. 歯科医院の院長が退職するとき、何が必要?
  5. まとめ

個人開業の期間も、退職金の年数に入る?

入らないと考えられます。年数は、医療法人の役員として勤めた期間です。

退職金の目安は、「最終の報酬月額×勤めた年数×倍率」で出す方法が広く使われています。この年数をどこから数えるかで、額は大きく変わります。

法人税の法令は、この年数を「その法人の業務に従事した期間」としています。個人で開業していた期間は、医療法人の業務ではありません。

受け取る側の税金でも、年数は、退職金を支払う人の下で続けて勤めた期間で数えます(国税庁の源泉徴収の説明)。

そのため、個人開業の期間は、どちらの年数にも入らないと考えられます。ご自身の法人での扱いは、顧問税理士にご確認ください。

計算例(架空の数字)

開業から20年で退職する院長の例です。最初の10年は個人開業、後の10年は医療法人の理事長でした。最終の報酬月額は100万円、倍率は2.0と置きます。

開業から数えると、100万円×20年×2.0で4,000万円です。役員の期間で数えると、100万円×10年×2.0で2,000万円になります。

目安になるのは、役員の期間で数えた2,000万円です。倍率2.0は計算を見せるための仮の数字で、相場や上限ではありません。

開業法人化退職個人開業 10年理事長 10年年数に入らない(原則)退職金の年数100万×10年×2.0=2,000万円
図:開業20年のうち、退職金の年数になる期間(架空の数字)

開業から数えた4,000万円を払う場合を考えます。差の2,000万円は、高すぎる(税法の言葉で「不相当に高額」)と判断される可能性があります。

高すぎると判断された部分は、法人の経費(損金)に入りません。

額の目安の出し方は、医療法人の退職金の相場の記事で解説しています。

詳しく:職員(歯科衛生士など)の退職金は、扱いが違います
  • 個人開業のときから勤める職員は、規程に通算すると定めていれば、税金の年数に個人開業の期間を含められます。
  • ただし、個人開業のとき青色事業専従者(給与を経費にしていた家族)だった人は除きます。
  • 法人側も、法人化から相当の期間が過ぎた後の退職なら、通算した退職金を損金にできるとされています。
  • いずれも職員(使用人)についての国税庁の扱いで、院長ご自身の話ではありません。
  • これは年数の数え方の話です。職員に退職金が出るかどうかは、医院の規程によります。

法人化して間もないと、税金は変わる?

変わります。役員として5年以下だと、受け取る側の税金で2分の1の計算がありません。

退職金は「退職所得」として、ほかの所得と分けて計算します。勤続年数に応じた額を差し引き、残りの2分の1に税金がかかるのが原則です。

役員としての勤続年数が5年以下の人が、その期間について受け取る退職金は、この2分の1の計算がありません。

ここでも年数は、役員になってからの期間です。開業から長くても、法人化して5年以下なら、この扱いになる可能性があります。

1年未満の端数は、1年に切り上げて数えます。たとえば4年11か月は5年、5年1か月は6年です。

差し引ける額も、法人での年数で決まります。20年以下なら1年40万円で、10年なら400万円です。

くわしくは理事長の退職金の基本の記事をご覧ください。

個人開業のときの小規模企業共済は、どうなる?

個人の医院を廃業して医療法人の役員になると、そのまま続けることはできません。

小規模企業共済は、個人事業主や会社の役員が、ご自身の退職金を積み立てる国の共済制度です。中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営しています。

中小機構は、医療法人を「直接営利を目的としない法人」としています。そのため、医療法人の役員は加入できません。

法人化して医療法人の役員になると、契約を引き継げません。個人事業の廃業として、共済金を請求する扱いです。

共済金を一括で受け取ると、退職所得の扱いになります(中小機構の説明)。受け取りの時期や税金は、顧問税理士にご確認ください。

詳しく:加入資格が残る場合
  • 個人の医院を廃業せずに、医療法人の理事長にも就いた場合は、加入資格があるとされています(中小機構の説明)。
  • ご自身が当たるかどうかは、中小機構か顧問税理士にご確認ください。

歯科医院の院長が退職するとき、何が必要?

理事長と院長を継ぐ人が必要です。院長は歯科医師に限られます。

医療法では、理事長は原則として、医師または歯科医師である理事から選びます。都道府県知事の認可を受ければ、それ以外の理事から選ぶこともできます。

歯科の診療所の管理者(いわゆる院長)も、歯科医師に任せなければなりません。医療法人は、この管理者を理事に加えるのが原則です。

退職金が損金になるには、実際に退職していることが前提です。理事長や院長のまま、経営の中心に残っていると、退職金と扱われない可能性があります。

実際の退職の考え方は、理事長の退職金の基本の記事で解説しています。

誰に引き継ぐかは、早めに考えておくと手続きを進めやすくなります。

まとめ

まずは、医療法人を設立した日と、理事長に就いた日を確かめておきましょう。

確認すること

  • 医療法人を設立し、理事長に就いた年月日
  • 退職を考える時期に、役員として何年になるか(5年以下かどうか)
  • 退職金規程で、年数をどこから数えると書いているか
  • 理事長と院長を継ぐ人(院長は歯科医師)の候補がいるか
  • 個人のときの小規模企業共済の契約が、残ったままになっていないか
出典・参考資料(クリックで開く)

この記事は2026年11月時点の情報にもとづいています。

記事の誤りに気づいた方は、こちらからお知らせください。

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