医療法人の理事の給与は役員報酬|勤務医・家族の理事の注意点
勤務医の先生や、配偶者などの家族を理事にしている。その人に払うお金は、職員の給与と同じ扱いでよいのか、迷うところです。
この記事の要点
- 理事に払うお金は、原則として役員報酬です。
- 毎月同額が基本で、仕事に見合わない部分は経費(損金)に入りません。
- 職員の役職もある理事には、職員としての給与を別に払える場合があります。
勤務医や家族を理事にすると、給与は役員報酬になる?
なります。理事に払うお金は、原則として職員の給与ではなく役員報酬として扱われます。
法人税では、医療法人の理事は「役員」です。役員報酬には、職員の給与にはない次のルールがかかります。
| 職員の給与 | 役員報酬 | |
|---|---|---|
| 毎月の額 | 途中で変えてもよい | 毎月同額が基本 |
| 高すぎる部分 | 原則、問われない | 法人の経費(損金)に入らない |
| 決め方 | 就業規則など | 社員総会などで決めた総額の範囲内 |
毎月同額のルールと、変えるときの時期は役員報酬の記事で説明しています。
総額の決め方は決め方と過大の基準の記事をご覧ください。
勤務医の理事も、家族の理事も同じです。理事になった時点で、払うお金は原則として役員報酬になります。
家族の理事には、いくら払える?
仕事の内容に見合う額までです。仕事に比べて高すぎる部分は、損金に入りません。
高すぎるかどうかは、理事長と同じ物差しで判断されます。仕事の内容、法人の収益、職員の給与、同業の法人の報酬などです。
例えば、診療や経営にほとんど関わらない家族に高い報酬を払うと、高すぎる部分があると判断される可能性があります。
経営に関わらない補助的な役員の報酬に、高すぎる部分があるとされた判決もあります。眼科の例で、歯科の例ではありません(税務訴訟資料258号-184)。
判決の内容は決め方と過大の基準の記事で紹介しています。
家族の報酬を決めるときは、どんな仕事を、どれくらいしているかを記録に残しておくと、説明の材料になります。
詳しく:理事ではなく、職員として働く家族は?
役員の親族などである職員の給与にも、同じ考え方があります。仕事に比べて高すぎる部分は、損金に入りません(法人税法36条)。
職員なので、毎月同額のルールはかかりません。それでも、ほかの職員と比べて説明できる額にしておくことが大切です。
家族を監事にするのは適当でないとされています
監事は、法律で、理事や職員を兼ねることができません。また、厚生労働省の指導の基準では、ほかの役員の親族などでないことも求められています。
勤務医の理事には、職員としての給与を別に払える?
職員の役職もあり、常に職員の仕事をする理事なら、払える場合があります。理事長ご自身は対象外です。
この記事では、職員としての仕事に払う給与を「職員分」と呼びます。職員分を払える理事を「使用人兼務役員」といいます。
使用人兼務役員の条件は2つです。副院長・診療部長など、職員としての役職があること。そして、ほかの勤務医と同じように、常に職員の仕事をしていることです。
職員分の給与には、毎月同額のルールがかかりません。職員分の手当や賞与(ボーナス)も、高すぎない限り、原則として損金に入ります。
職員分を払うときの注意
- 役員報酬と職員分を、給与の明細や台帳で分けて記録します。
- 職員分の賞与は、ほかの職員と同じ時期に払います。時期がずれた分は損金に入りません。
- 高すぎるかどうかは、役員報酬と職員分を合わせた額でも判断されます。
職員が少なく、職員の役職をそもそも決めていない法人もあります。その場合も、ほかの職員と同じ仕事を常にしていれば、使用人兼務役員として扱えることがあります。
具体的な手続き(役職の決め方や記録の仕方)は、顧問税理士にご確認ください。
理事長ご自身は、職員分を払えません
次の人は、使用人兼務役員になれません。
- 理事長
- 監事
- 定款や社員総会などで、常務理事などの役職を与えられた理事
- 非常勤の理事(毎日は勤務せず、常に職員の仕事をしていないため)
このほかにも、なれない場合があります。顧問税理士にご確認ください。
社員総会で決める総額に、職員分は入る?
「職員分を含めない」と決めていなければ、入ります。決め方によって、総額を超えるかどうかが変わります。
社員総会で決めた総額を超えた分は、損金に入りません。勤務医の理事に職員分を払うなら、総額の決め方を確かめておく必要があります。
計算例(架空の数字)
3月決算の法人で、社員総会で理事の報酬の総額を「年1,200万円以内」と決めていたとします。理事長は月70万円、勤務医の理事は月30万円です。
役員報酬の合計は、(70万円+30万円)×12か月で1,200万円です。ちょうど総額と同じです。
この勤務医の理事に、職員分の給与を月50万円払うとします。年間では50万円×12か月で600万円です。
総額に職員分を含めない決め方をしていなければ、合計は1,800万円になります。総額を600万円超えるため、この600万円は損金に入らないと考えられます。
「職員分を含めない」と決めていれば、職員分は似た仕事の勤務医の給与と比べられます。それに見合う額までは総額の外で、超える部分は総額に数えます。
数字は説明のための例です。実際の取り扱いは、顧問税理士にご確認ください。
これから職員分を払うなら、社員総会で総額を決めるときに「職員分を含めない」と書いておく方法があります。書き方は顧問税理士にご確認ください。
まとめ
- 理事に払うお金は、原則として役員報酬です。
- 毎月同額が基本で、仕事に見合わない部分は損金に入りません。
- 職員の役職もある理事には、職員分の給与を別に払える場合があります。理事長ご自身は対象外です。
まずは、理事一人ひとりの仕事の内容と、払っている額を書き出してみてください。
確認すること
- 家族の理事が、どんな仕事をどれくらいしているか、記録があるか
- 勤務医の理事への支払いが、明細で役員報酬と職員分に分かれているか
- 職員分の賞与の時期は、ほかの職員と同じか
- 社員総会で決めた総額に、職員分を含めるかどうか決めているか
- 監事に、理事の家族が入っていないか
出典・参考資料(クリックで開く)
この記事は2026年11月時点の情報にもとづいています。
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